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- M&A・事業承継の解決事例
【解決事例①】小売店の経営者
相談者
関東地方に複数の拠点を有する小売店(株式会社)の経営者(60代)
相談内容
相談者が経営する会社は設立以来、バイク関連用品の販売に特化しており、売上高約10億円に対し経常利益が約3億円と、高い収益力を有していた。
会社の株主構成は、発行済株式のうち相談者が60%を保有しており、残りの40%については相談者の長男が30%、長女が10%を、それぞれ保有していた。
従来、相談者は長男・長女のいずれかが将来的に会社の代表取締役となってくれることを希望していたため、その旨を打診したものの両名とも会社を継ぐ意向ではなかったため、M&Aにより第三者に会社の発行済株式の全てを譲渡することに方針を切り替えていた。
もっとも、承継先をどのように探せばよいのか、また承継先とどのように交渉すれば良いのかを含めたM&Aの進め方が分からず、ご自身でM&Aに取り組むことに不安を感じられたため、当事務所に相談し、会社の事業承継に関する全面的なサポートを依頼することとなった。
当事務所における対応
まず、M&Aを行う上では第三者が会社の議決権の少なくとも3分の2以上を取得できることが前提となるため、経営者の保有する株式に加え、経営者の長男・長女が保有する株式も譲渡対象に含める必要があった。そこで、当事務所の弁護士より経営者の長男・長女に対し、両名が保有する株式の第三者への譲渡について打診・説明を行い、了解を得た。
承継先の探索については、会社の収益力が高いことから、1社との交渉に限定するのではなく、複数の入札者を募る、いわゆるオークション方式を採用した。
もっとも、情報管理の観点や、株式譲渡代金が10億円を超える可能性があったことから、類似した事業を営む会社のうち、規模が大きく、かつ業績も良い会社、あるいは投資会社(プライベート・エクイティ・ファンド)に限定して提案を行い(リミテッド・オークション)、その結果、複数の会社から入札を得ることができた。
経営者及び長男・長女が協議の上、入札した会社のうち、最終交渉を行う会社を決定した後、承継先によるデュー・ディリジェンスの実施、株式譲渡契約の交渉・締結を経て、当事務所への相談開始から1年以内に、株式譲渡の実行に至った。
なお、株式譲渡の実行時点で経営者はまだ60代であったことから、経営者は代表取締役を退任したものの、顧問として引き続き会社の経営に関与し、承継先をサポートすることとなった。
【解決事例②】小規模クリニックの院長
相談者
東北地方の小規模クリニック(持分の定めのある医療法人)の院長(70代)
相談内容
相談者は医療法人(持分の定めあり)の理事長で、経営するクリニックの後継者が不在であったため、M&A仲介会社を通じてクリニックの承継先を探し始めたところ、新型コロナウイルスの影響により業績が悪化し、承継先の探索が困難となったため、廃業の可能性を含め、当事務所へ相談するに至った。
また、医療法人には金融機関(政府系金融機関及び地方銀行)からの借入金があり、理事長はいずれの借入金についても連帯保証人となっていたため、理事長としては連帯保証の解除を希望していた。
なお、医療法人の持分は、理事長、理事長の奥様及び長男が保有していた。
当事務所における対応
持分の定めのある医療法人は医療法の改正により現在では新たに設立することができないため、開業を検討している個人の医師からのニーズがあると考え、当事務所のネットワークを活用し、承継先の探索を開始した。なお、医療法人の業績が悪化していたことから、持分の価値はほぼゼロであったが、理事長に対して役員退職金を支給することは可能であった。
また、承継先が見つからなかった事態に備えて、医療法人が借入を行っている金融機関に対して事情を説明し、元本の支払猶予を依頼する手続を並行して行った。
そうしたところ、承継先の探索開始から数か月が経過したタイミングで個人の医師よりクリニックを承継したい旨の意向が示されたため、医療法人の持分を譲渡するスキームでの事業承継の検討と、連帯保証の解除の手続に向けた取組みを開始した。
その結果、医療法人の持分については備忘価格(1円)で承継先に譲渡し、理事長は医療法人から受領した退職慰労金の一部をもって借入金の返済に充て、残りの借入金については金融機関が債権放棄をすることで合意が得られた。
このように私的整理手続を活用することで、赤字のクリニックを廃業することなく、事業承継・連帯保証の解除という理事長の希望を実現するに至った。
【解決事例③】相続により株式の一部を取得した方
相談者
相続により株式の一部を取得したご姉弟(40代)
相談内容
食品加工会社の経営者であった父親(70代)が亡くなり、父親が保有していた会社の発行済株式の全てを、姉弟がそれぞれ50%ずつ相続した。父親が亡くなった後も、会社の経営は、父親が生前から経営を委任していた取締役(ご親族ではない方)のもとで問題なく運営されており、会社の業績も好調である。
相続人である姉弟は、これまで会社の経営に一切関与しておらず、また株式の相続税の負担も大きいため、会社の業績が好調であるうちに株式を売却したいと考えていた。
また、父親は会社名義の不動産を自宅として使用していたが、姉弟のいずれも当該不動産を使用する予定が無いため、第三者に売却したいとの意向であったため、相続した株式の売却と、父親が使用していた不動産の売却のいずれについても、当事務所において全面的にサポートすることとなった。
当事務所における対応
まず株式の売却について、食品加工会社のような商流が明確になっている業態(例:生産者⇒加工⇒メーカー⇒卸売⇒小売)の場合には、その商流のいずれかに位置する会社が株式を取得するニーズがある可能性が高いため、会社と直接取引のあったメーカーと卸売に初期的な打診を行った。
また、メーカーと卸売への打診と並行して、投資会社(プライベート・エクイティ・ファンド)への打診を行ったところ、複数の会社から入札を得ることができた。
依頼者である姉弟にて協議の上、入札した会社のうち、最終交渉を行う会社を決定した。但し、買主からは、父親が使用していた不動産は事業に不要であるため、事前あるいは株式譲渡と同じタイミングで売却していることを、株式を取得する条件とされた。
不動産の売却については、不動産仲介会社に依頼すると仲介手数料(3%)が発生するため、当事務所が連携している不動産会社を通じて近隣の土地所有者に直接連絡したところ、隣接する土地所有者が買取りを希望するに至った。
このように、株式・不動産のいずれについても売却の目途が立ったことから、当事務所において株式譲渡契約・不動産売買契約を作成し、相手方との交渉を経て、当事務所への相談開始から約1年が経過した頃に株式・不動産の売却が完了した。
このように、相続により自身が経営に関与していない会社の株式を取得した場合には、相続税の負担を回避するためにも早期に対応策を検討する必要がある。