2022年4月に経済産業省がスタートアップの新市場創出の推進に向けて弁護士からなる「スタートアップ新市場創出タスクフォース」の創設を公表するなど、産業を活性化する上でのスタートアップの重要性は高まっています。
これに伴い、大企業の事業部門、ベンチャーキャピタル(VC)、コーポレート・ベンチャーキャピタル(CVC)などによるスタートアップへの投資の件数・金額も増加基調にありますが、複数の投資案件を手掛けている投資家側のプレイヤーと比較して、スタートアップ側は経験などにおいて劣後しているのが実情です。
その結果、スタートアップが投資を受ける際の条件が十分に検討されておらず、スタートアップにとって不利な内容の契約が締結されているケースが少なくありません。
当事務所は投資家・スタートアップの双方に対してアドバイスを行っていますが、スタートアップ市場の推進のためには、契約内容はフェアな内容であるべきと考えています。
そこで、本コラム及び次回のコラムにおいて、スタートアップへの投資と契約に関する留意点を解説させていただきます。
1. スタートアップへの投資の流れ
VCなどの投資家があるスタートアップへ投資する際には、投資金額や投資の可否を検討するために、投資の実行に先立ちデューディリジェンスを行うことが通常です。
デューディリジェンスについてはこちらのページで解説しておりますが、対象会社の100%株式取得のような通常のM&Aにおけるデューディリジェンスと、スタートアップへの投資の際のデューディリジェンスでは、調査の分野・範囲が異なる場合が多いと思われます。
これは、スタートアップへの投資により投資家が取得する発行済株式の割合が過半数に満たないことが多く、通常のM&Aよりもリスクが限定的であることが理由と考えられます。
他方で投資金額が数十億円に上るような場合には、投資の意思決定を慎重に行う必要があるため、通常のM&Aと同様のデューディリジェンスが行われることもあります。
また、スタートアップにおいては法務・財務の管理体制よりも、ビジネスの成長性の有無が重視されるため、いわゆるビジネスデューディリジェンスについては通常のM&Aよりも厳密な調査が行われることが少なくありません。
以上のようなデューディリジェンスの結果を踏まえて、投資金額について投資家とスタートアップの目線が合えば、次に契約交渉のフェーズに移行することになります。
2. スタートアップへの投資と契約:概要
スタートアップへの投資の際に締結される主な契約は、①投資契約と、②株主間契約になります。①投資契約は投資の条件について規定するもので、②株主間契約は投資後のスタートアップの経営体制や投資家の権利について規定するものになります。
投資の規模によっては、投資契約のみが締結され、株主間契約は締結されなかったり、株主間契約において規定する内容を投資契約に規定するケースもありますが、通常はこれら2つの契約を締結することになります。
これらの契約の違いについては次回のコラムで解説させていただきますが、大まかにいえば投資契約は投資の実行に向けた契約、株主間契約は投資実行後、スタートアップの運営に関わる契約と言うことができます。
いずれの契約も、通常のビジネスの場面ではほぼ扱うことがない種類の契約であるため、スタートアップが投資案件に詳しい専門家のアドバイスを受けない場合には、投資家側に有利な内容になってしまう傾向があります。
3. まとめ
本コラムでは、スタートアップへの投資の流れと、投資契約・株主間契約の概要について、解説させていただきました。
次回のコラムでは、投資契約・株主間契約の内容と、契約交渉の場面での留意点について解説させていただきます。
当事務所では、多数の投資案件に関与している複数の弁護士が、スタートアップ・投資家の双方をサポートしております。初回相談は無料で承っておりますので、お悩みの場合には当事務所までご相談ください。
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