弁護士コラム

弁護士コラム「【M&A・事業承継】クロージングでは何をするのか?」が掲載されました。

2024.10.30

 

M&A・事業承継の検討を始めると、これまでに聞いたことがない用語が出てくるかと思います。

代表的なものとして「表明保証」、「前提条件」、「コベナンツ」といったものがありますが、「クロージング」も一般的な用語ではなく、具体的なイメージが持ちづらいのではないでしょうか。

これらの用語は、M&A・事業承継に関する契約内容を確認する上で正確な意味を理解しておく必要がありますが、のみならず、M&A・事業承継のプロセスを進める上でもその意味を理解しておくことが重要です。

そこで本コラムでは、理解しておく必要性が特に高い「クロージング」という用語について解説させていただきます。

 

1. 「クロージング」とは

M&A・事業承継において「クロージング」という言葉は、当事者間で合意した対象物(典型的には株式)の譲渡と、それに対する対価の支払を意味します。

M&A・事業承継においては、株式譲渡、会社分割、事業譲渡など、様々なスキームが選択されますが、スキームが株式譲渡であれば、売主による株式の譲渡と買主による株式譲渡代金の支払をまとめてクロージングと呼び、スキームが事業譲渡であれば、売主による事業の譲渡と買主による事業譲渡代金の支払をまとめてクロージングと呼びます。

不動産取引では、不動産の譲渡と代金の支払をまとめて「決済」と呼びますが、M&A・事業承継における「クロージング」は、これとほぼ同じ意味となります。

 

「クロージング」に類似した言葉として、「クロージング日」というものがありますが、これは「クロージングを行う日」を意味するもので、スキームが株式譲渡の場合、売主の立場では株式を譲渡する日、買主の立場では譲渡対価の支払日ということになります。

また、「クロージング会場」とは、クロージングを行う場所を意味します。

 

M&A・事業承継においては、売主・買主のいずれもクロージングを目指してプロセスを進めることになりますので、まずは「クロージング」という用語の正確な意味を抑えていただきたいと思います。

 

2. クロージングでは何をするのか

1.でクロージングの意味についてご説明しましたが、実際にクロージングの場面で何をするのかを把握しておくと、具体的なイメージが付くかと思いますので、ここでは株式譲渡のクロージングの流れをご紹介させていただきます。

 

M&A・事業承継のプロセスが進み、無事にクロージング日を迎えると、クロージング会場に売主、買主及びアドバイザーが集まります。M&A・事業承継は取引規模が大きく、銀行送金に時間がかかる可能性を踏まえて、集合時間は午前9時など午前中の早い時間帯となることが一般的です。

全員が集合したことを確認すると、当事者及びアドバイザーにて株式譲渡契約における前提条件が充足されていることを確認します。なお、資金調達が複雑な案件では前提条件の充足の確認に時間がかかることから、クロージング日の12週間前に「プレ・クロージング」と呼ばれる手続を行い、前提条件の充足状況を確認することもあります。

前提条件が全て充足されていることを確認すると、クロージングに移ります。

株券発行会社の場合には株券を、株券不発行会社の場合には株主名簿の名義書換請求書(売主側の必要事項を全て記載したもの)を買主に交付し、買主はこれと引換えに、事前に売主が指定した預金口座に対する株式譲渡代金の送金手続を行います。

なお、上記のとおり銀行送金に時間がかかる場合には、株主名簿の名義書換請求書は買主側のアドバイザー(通常は弁護士)に預ける形とし、売主が株式譲渡代金の着金を確認した段階で、買主側のアドバイザーから買主に株主名簿の名義書換請求書を渡すこともあります。

 

以上が株式譲渡のクロージングの具体的な流れとなります。

 

3. 登記手続など

M&A・事業承継の場面では、クロージング日に売主である代表取締役が退任し、買主側が指定する方が新たに取締役に就任する旨を合意していることがあります。

また、売主である代表取締役が居住している自宅について、クロージング日に売主が会社から買い取る旨を合意していることもあります。

これらの場合、会社の変更登記手続や不動産の所有権移転登記手続が必要となり、これらの手続(登記申請手続)についてもクロージング日のうちに完了させることがあります。

ただ、これらの手続自体はクロージングそのものではなく、「クロージングに付随する手続」という扱いとなります。

 

4. まとめ

本コラムでは、「クロージング」という用語の意味の解説と、株式譲渡を例に、具体的なクロージングの流れについて解説させていただきました。

M&A・事業承継に取り組まれると、当初は用語の意味が分からず、アドバイザーによる説明もあやふやな理解となってしまい、ストレスを感じられる方が少なくありません。

M&A・事業承継の検討からクロージングまでには一定の時間が必要となりますので、最終的には全ての用語を理解されるかと思いますが、用語の理解があやふやな状態ではM&A・事業承継に伴うリスクの分析も難しくなるため、なるべく早いタイミングで用語を理解されることをお勧めいたします。

当事務所では、事業承継・M&Aの検討からクロージングまで、プロセス全体をサポートしておりますので、事業承継・M&Aを検討中でお悩みの方は、お気軽にご相談いただければ幸いです。

また、事業承継・M&Aに関する初回相談は無料で承っておりますので、お電話またはこちらのお問い合わせフォームからぜひご相談ください。

 

※本コラムの内容は、一般的な情報提供であり、具体的なアドバイスではありません。お問い合わせ等ございましたら、当事務所までご遠慮なくご連絡下さいますよう、お願いいたします。

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