弁護士コラム

弁護士コラム「合併を利用した経営統合における検討事項」が掲載されました。

2024.11.28

複数の会社が同じ目的を実現するため、経営統合を行うことがあります。経営統合という用語は法律用語ではなく、定義が明確に決まっているものではありませんが、それぞれが有する人的・物的資源を共通のリソースとして活用するべく、目的に応じて、株式譲渡、事業譲渡や合併・会社分割などのM&A のスキームを利用することが一般的です。そのため経営統合は様々な形で行われますが、「対等な」経営統合を実行するために吸収合併を用いることがあります。

吸収合併による経営統合は、他のスキームを利用した経営統合と比較すると件数が少なく、検討すべきポイントが分かりづらいかと思われます。

そこで本コラムでは、吸収合併を利用した経営統合について、主要なポイントを解説させていただきます。

なお、合併には吸収合併のみでなく新設合併もありますが、実務上、新設合併を利用できる場面は非常に限られているため、本コラムでは吸収合併について記載させていただきます。

 

1. 経営統合の手法として合併を用いることのメリット・デメリット

経営統合を行う上でどのような手法を用いるかは、経営統合の目的を実現するために利用可能な手法のメリット・デメリットを検討して決定することになります。

経営統合に際して吸収合併を用いた場合の主なメリット・デメリットについては、以下のように整理することが可能です。

吸収合併を用いた場合のメリット
・複数の会社が1つとなるため、形だけの経営統合ではなく、経営方針や人事制度等において実質的な経営統合を進めることができる
・会社の規模が拡大することにより、取引先との交渉や従業員の採用の場面で優位性を確保することができる
・間接部門や外注先を共通化することにより、コストを削減することができる

 

吸収合併を用いた場合のデメリット
・吸収合併の効力発生後は後戻りが事実上できない
・吸収合併によりいずれかの会社が消滅するところ、消滅する会社側に不公平感が生じる可能性がある
・給与などの人事面での待遇に大きな差異がある場合、人事制度の統一のために多額の費用が生じる可能性がある

 

上記のデメリットのうち、心情的に経営者にとって受け入れがたいのは、自らが経営する会社が消滅する可能性があるという点かと思われます。吸収合併を選択する場合にはいずれかの会社が消滅することは避けられず、そのため実務上は、消滅する会社をどのように決定するか、あるいは消滅する会社の社名を統合後の会社の社名に入れるかなどを議論し、消滅する会社に配慮してプロセスを進めることが一般的です。

株式譲渡を利用した経営統合であっても親会社・子会社の関係性が生じる以上、このような事態は吸収合併を用いた場合に限りませんが、異なる文化・風土をもった会社が1つになる以上は、共通する目的のために、合理的かつ双方に配慮した進め方が必要となります。

 

2. 経営統合における主要な検討事項

吸収合併を用いた経営統合においては、「合併準備委員会」などの名称のプロジェクトチームを両社が組成し、合併契約の内容、合併後の会社の運営体制などについて検討、協議することが一般的です。

プロジェクトチームにおける主要な検討事項は以下のとおりです。

合併契約に関する事項
・合併比率
・新会社の社名
・新会社の経営陣

 

株主総会への付議事項
・定款変更
・取締役・監査役の改選
・取締役・監査役の報酬
・会計監査人の選任の要否
・資本金などの額

 

合併後の組織
・経営理念、成長戦略など
・大株主の出資比率
・ガバナンスの基本方針
・業務執行体制
・子会社・関係会社のコントロール方針

 

合併後の業務執行方針
・経営基本方針
・定量的な目標
・中期経営計画
・長期ビジョン

 

上記の事項に加え、吸収合併による経営統合を、従業員に対してどのように周知するかなども、プロジェクトチームにおいて検討することがあります。

 

3. まとめ

本コラムでは、吸収合併を利用した経営統合について、主要なポイントを解説させていただきました。吸収合併を利用した経営統合は事例が少ないため、本コラムの内容が検討を進める上で参考になれば幸いです。

当事務所ではM&Aに関する初回相談は無料で承っておりますので、経営統合の進め方などでお悩みの際は、当事務所までお気軽にご相談ください。電話またはお問い合わせフォームよりご連絡をいただければ担当弁護士よりご連絡させていただきます。

 

※本コラムの内容は、一般的な情報提供であり、具体的なアドバイスではありません。お問い合わせ等ございましたら、当事務所までご遠慮なくご連絡下さいますよう、お願いいたします。

icon mail

お問い合わせ

icon tel

03-6550-9423

病院・クリニックの事業承継M&A
廃業についてお悩みの方へ