現在、日本の中小企業の経営者の多くが後継者不足の問題に直面しています。
近年では第三者承継(M&Aによる事業承継)という選択肢が増えたものの、承継先が第三者であるがゆえのトラブルが生じることもあり、事業承継の知見がある専門家にすぐに相談できる環境にない場合には、第三者承継を選択することに躊躇される方も多くおられます。そのような背景もあり、「廃業」を選択する中小企業の数は、毎年かなりの数に上ります。
廃業となると、事業を停止し、法的には会社を清算することになりますので、従業員や取引先に大きな影響が生じるため、経営者は周りに相談することが難しくなります。
そこで本コラムでは、事業承継・廃業を選択する上ではどのような点に注意して検討すべきか、ポイントを絞って解説させていただきます。
1. 会社の負債の弁済の可否
最初に検討する必要があるのは、廃業を選択した場合、会社の負債をすべて弁済できるかどうかです。これは、会社の負債をすべて弁済できない状況で廃業するとなると、法的には「破産」という手続しか選択できないためです。
もちろん破産手続は法律上の制度ですので、選択してはいけないということではありませんが、中小企業が破産手続を選択する局面では、金融機関からの借入れの返済が困難である場合が多いと思われます。
そして、金融機関からの借入れについて、経営者が個人で連帯保証人となっている(いわゆる「経営者保証」)、あるいは自宅に抵当権などの担保権を設定している状況で破産手続を選択してしまうと、経営者が連帯保証債務を履行する、すなわち借入金の返済を個人で行う必要が生じたり、担保権が行使され、自宅が競売にかけられてしまうというリスクが生じます。
このような理由から、廃業するかどうか検討する際には、会社の負債をすべて弁済できるかどうかが極めて重要なポイントになります。
なお、全額返済する必要がある「会社の負債」については、廃業を検討している時点の貸借対照表から確認できる負債のみとは限らない点にも注意が必要です。
従業員へ支払う退職金や解雇予告手当、あるいは事業を停止することによって取引先に損害が発生する場合の損害賠償債務などを考慮した上で、会社の負債をすべて返済できるかどうかを判断する必要があります。
2. 株主間での利害関係の調整
経営者が唯一の株主である場合には問題となりませんが、株主が複数の場合、廃業を選択するにあたっては株主間での利害関係の調整も必要となります。
会社の負債をすべて弁済できる場合には「通常清算」という手続を利用して廃業することが可能ですが、通常清算については株主総会の特別決議が必要となりますので、議決権を行使できる株主の過半数の株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上がこれに賛成することが求められます。
そのため、例えば経営者が議決権割合で90%に相当する株式を保有しており、他の株主は1名(議決権割合で10%)というようなケースでは、他の株主が出席しなければ「議決権を行使できる株主の過半数の株主が出席」していないこととなりますので、特別決議は成立しません。
このような事態が生じないように、株主が複数の場合には、清算手続を行った場合に株主が受領する残余財産の金額のシミュレーションを作成し、他の株主にとってもメリットがあることを説明するなどして、株主間での利害調整を事前に行う必要があります。
3. 従業員の雇用の維持
仮に上記1.、2.に記載した事項がクリアーできるとしても、経営者にとって、廃業により従業員の雇用が維持されないということは、受け入れがたい問題の1つと思われます。廃業するということは会社が存在しなくなることを意味しますので、廃業と従業員の雇用の維持は両立しないように思われますが、会社の事業が問題なく運営されており、一定の収益が出ているようなケースでは、他社に事業を譲渡し、従業員を引き継いでもらうことで、廃業と従業員の雇用の維持を両立することが可能です。
「事業譲渡」あるいは「会社分割」と呼ばれる手法を用いて事業を従業員ごと他社に承継することができるのであれば、経営者の「廃業」に対する抵抗感もかなり薄れるのではないでしょうか。
4. まとめ
本コラムでは、事業承継・廃業を選択する上での検討事項について、ポイントを解説させていただきました。
事業承継か廃業を選択する上では、本コラムで述べた点や、専門家のアドバイスを踏まえて慎重に検討する必要があります。
当事務所では、事業承継・廃業のいずれについても豊富な経験を有する弁護士が、中小企業の経営者をサポートさせていただいております。
初回相談は無料で承っておりますので、事業承継・廃業でお悩みの際は、お電話またはこちらのお問い合わせフォームよりご連絡をいただけますと幸いです。
※本コラムの内容は、一般的な情報提供であり、具体的なアドバイスではありません。お問い合わせ等ございましたら、当事務所までご遠慮なくご連絡下さいますよう、お願いいたします。