弁護士コラム

弁護士コラム「基本合意書と意向表明書の違い」が掲載されました。

2025.04.16

 

M&A・事業承継においては、「LOI」という用語が頻繁に用いられます。

LOIとはLetter of Intentの略称ですが、LOIには2つの意味があります。1つは「基本合意書」で、もう一つは「意向表明書」です。

M&A・事業承継の専門家であれば、LOIという言葉が用いられる文脈によって、それが基本合意書・意向表明書のいずれを意味するのか分かりますが、M&A・事業承継に初めて取り組む当事者にとっては、LOIが何を意味するのか分からず混乱されることもあるのではないでしょうか。

そこで本コラムでは、基本合意書と意向表明書の違いについて解説させていただきます。

 

1. 基本合意書とは

基本合意書とは、売主・買主との間で締結される、検討中のM&A・事業承継に関する基本的な条件、スケジュールなどを規定する契約のことです。

基本合意書は買主によるデュー・ディリジェンスの開始前に締結されることが多いところ、その理由は、本格的な検討を開始する前に当事者間の目線が揃っていることを確認することにあると考えられます。

具体的には、デュー・ディリジェンスが開始すると買主は時間と費用をかけることになり、売主は自社の情報を開示することになるという意味で双方がリスクを負うことになりますが、デュー・ディリジェンスの実施後に金額などの基礎的な条件について、当事者間での目線が揃っていないとなると、売主・買主の双方が不必要なリスクを負ったことになりかねません。

そのため、デュー・ディリジェンスの開始前に基本合意書を締結することにより、当事者間の目線が揃っていることを書面で確認するというメリットがあります。

なお、基本合意書はあくまでM&A・事業承継に関する基本的な条件やスケジュールなどを規定するものですので、秘密保持義務・準拠法・管轄といった一般条項を除き、その大部分に法的拘束力を持たせないことが一般的です。

 

2. 意向表明書とは

M&A・事業承継において意向表明書という用語は、買主から売主に対して提出される、検討中のM&A・事業承継に関する買主の意向を記載した書面、という意味で用いられることが通常です。

M&A・事業承継がオークション方式で行われる場合には、初期的な意向表明書及び最終意向表明書という2種類の意向表明書が、買主から売主に対して提出されます。

意向表明書において記載される内容は、買主の概要・業績、M&A・事業承継を検討している理由(シナジーなど)、希望する譲渡価格などです。

初期的な意向表明書と最終意向表明書の違いは法的拘束力の有無にあり、初期的な意向表明書に法的拘束力はなく、最終意向表明書は法的拘束力を有することが通常です。

 

3. 基本合意書と意向表明書の相違点

上記のとおり、基本合意書と意向表明書は、LOIという略称である点においては同じですが、その内容は全く異なります。

基本合意書は契約ですが、意向表明書は買主の売主に対する取引(検討中のM&A・事業承継のこと)の申込みの意思表示ということで、法的な性質においても異なるものです。

M&A・事業承継の検討を始めて間もない場合、「LOI」という用語が様々な場面で登場し、混乱されるかもしれませんが、時間が経てば、「LOI」という用語が基本合意書と意向表明書のいずれを指すのかは、会話の流れや文脈から明らかになるかと思われます。

 

4. まとめ

本コラムでは、基本合意書と意向表明書の違いについて解説させていただきました。

基本合意書・意向表明書はいずれも「LOI」と呼称されるため紛らわしいのですが、本コラムを一読していただければ、その意味が自ずと明らかになるかと存じます。

また、基本合意書・意向表明書はM&A・事業承継において重要な書面である点において共通しております。

基本合意書・意向表明書の作成方法などでお悩みの際は、こちらのお問い合わせフォームよりご連絡をいただけますと幸いです。

 

※本コラムの内容は、一般的な情報提供であり、具体的なアドバイスではありません。お問い合わせ等ございましたら、当事務所までご遠慮なくご連絡下さいますよう、お願いいたします。

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