弁護士コラム

弁護士コラム「オーナー企業の法務デューデリジェンスにおける頻出問題」が掲載されました。

2020.05.20

M&Aが行われる際には、買主が対象会社に対してデューデリジェンスを行うことが一般的ですが、有価証券報告書などで基礎的な情報が開示されている上場会社と、非上場の中小企業では、デューデリジェンスの進め方、デューデリジェンスで発見される問題の性質も異なりますので、潜在的な問題を見逃すことなく、かつ効率的にデューデリジェンスを行う上では、対象会社の特性に応じたデューデリジェンスの準備をする必要があります。

本コラムでは、非上場のオーナー企業の法務デューデリジェンスにおいて頻繁に発見される問題点のうち、特に重要なものについて解説させていただきます。

なお、デューデリジェンスについてはデューデリジェンスのページでも解説しておりますので、デューデリジェンスとはそもそも何か?といった点について確認されたい場合は、そちらをご参照ください。

 

1. 株主の変遷に関する問題

オーナー企業に限らず、非上場会社の法務デューデリジェンスにおいては、設立から現在までの株主の変遷を株主名簿などの資料に基づき調査することが一般的です。
非上場会社では、発行する株式が譲渡制限株式であり、株主の移動が頻繁に行われることはない場合が多いですが、非上場のオーナー企業の中には、①設立から一貫して経営者であるオーナーのみが株主である場合と、②株式譲渡や相続などで株主に変動が生じている場合の2パターンがあります。

法務デューデリジェンスにおいて問題となるのは、専ら②のパターンです。
非上場のオーナー企業においては、株式譲渡の際に必要な手続(取締役会における譲渡承認決議等)が行われていない、あるいは必要な手続が行われていても資料が存在しないため確認できない、といったことは珍しくありません。

その結果、設立から現在に至るまでの株主の変遷が確認できず、現在の株主名簿の正確性に疑義が生じてしまい、問題となるケースもあります。

 

2. 株券に関する問題

現在の会社法のもとでは、株式会社は原則として株券を発行しない会社(株券不発行会社)であり、定款で特別に定めた場合に限り株券発行会社となります。そのため、設立されてからそれほど時間が経っていない会社では株券不発行会社であることが一般的ですが、歴史と伝統のあるオーナー企業の中には、株券発行会社のままになっている会社も存在します。

株券発行会社において特に問題となるのが、過去に行われた株式譲渡の有効性です。すなわち、株券発行会社の場合、株式の譲渡人が譲受人に対して株券を交付することが、株式譲渡の要件とされているため、株式譲渡の際に株券の交付がなされていなければ、譲渡代金の支払や株主名簿の書換が完了していても、株主は譲渡人のままとなります。

過去の株式譲渡の際に株券の交付がなされていたとしても、その事実を資料から確認できる場合はそれほど多くないため、この場合にも現在の株主名簿の正確性に疑義が生じてしまう結果となります。

 

3. 関連当事者との取引に関する問題

非上場のオーナー企業においては、オーナー自身、あるいはオーナーの親族や関連会社との間で取引を行っている場合があります。取引の内容は様々で、金銭消費貸借契約や製品の販売に関する契約といった対象会社の事業に必要な取引のほか、オーナーの住居の賃貸借契約やオーナーの親族の生命保険契約など、対象会社の事業と直接的な関連がない取引も存在します。

このような取引が存在する場合、法務の観点からは、当該取引が独立当事者間での取引と同様の条件になっているか、当該取引がM&A・事業承継の実行後に必要なものか、また当該取引の締結に際して必要な手続が行われているか、といった点を確認することになります。
そして、当該取引が対象会社の事業に必要な場合には、必要に応じて”Transition Service Agreement”(「TSA」と呼ばれる業務委託契約の一種)を、改めて締結することになります。

 

4. まとめ

今回のコラムでは、非上場のオーナー企業の法務デューデリジェンスにおいて頻繁に発見される問題点のうち、特に重要なものを解説させていただきました。もっとも、このような問題が発見されたからといって直ちにM&A・事業承継が頓挫するわけではなく、発見された問題に応じた対応策を取ることができれば、M&A・事業承継の実行は可能となります。

また、買主となられる方がこのような問題に注意していただきたいのはもちろんですが、M&A・事業承継を検討されている経営者の皆様で、同様の問題がある、またはその可能性があるとお考えの方は、当事務所までぜひ一度ご相談ください。

法務デューデリジェンスに先立ちどのような準備をすべきか、あるいは問題が発見された場合にはどうすべきかについて、これまでの実例を踏まえたアドバイスをさせていただきます。

 

※本コラムの内容は、一般的な情報提供であり、具体的なアドバイスではありません。

お問い合わせ等ございましたら、当事務所までご遠慮なくご連絡下さいますよう、お願いいたします。

 

03-3525-8940

お問い
合わせ