弁護士コラム

弁護士コラム「M&Aにおける基本合意」が掲載されました。

2020.09.18

M&Aが行われる際には、当事者間で「基本合意書」と呼ばれる契約を締結することが一般的です。基本合意書はMOU(Memorandum of Understanding)と呼ばれることもありますが、契約の内容としては同様のものになります。

基本合意書はM&Aの本格的な交渉が行われる前に締結されるものですが、その内容を理解しておかなければ後々問題となることもあります。そこで本コラムでは、基本合意書を締結する目的や、基本合意書の内容について解説させていただきます。

 

 

1. 基本合意書を締結する目的

基本合意書を締結する目的は、売主・買主のいずれの立場であるかにより異なります。

売主としては、買主に対して売却価格の目線を伝える目的や、またデューデリジェンスの期間を一定期間に限定する目的で基本合意書を締結する場合がありますが、いずれも法的拘束力が無いケースが通常ですので、売主の立場からすれば基本合意書の締結により大きなメリットを得られることは少ないと考えられます。

一方で買主としては、一定期間、売主と独占的に交渉する権利を得るために基本合意書を締結する場合が多いと思われます。特に売主が複数の買主候補にM&Aの提案を行っているケースでは、各買主候補が意向表明書を提出した後に、売主が最も優れていると判断した買主候補のみとの間で基本合意書を締結し、数か月の間、独占的に交渉を行うケースは珍しくありません。

なお特殊なケースとしては、上場会社が当事者となっているケースで、M&Aの実行前にプレスリリースを出すために基本合意書を締結している場合もあります。大規模なM&Aではデューデリジェンスへの対応にかなりの労力が必要となりますので、先行して公表することで人員を確保することが可能になります。

基本合意書を締結する一般的なものは上記になりますが、これ以外の目的であっても基本合意書を締結することはもちろん可能です。

 

2. 基本合意書の内容

基本合意書の内容は案件により異なりますが、下記の内容は、多くの基本合意書に共通して規定されるものとなります。

 

M&Aのスキーム

・大まかなスケジュール

・独占交渉期間

・法的拘束力の有無

・デューデリジェンスへの対応

・秘密保持義務

・準拠法

・裁判管轄

 

当事者間の交渉の状況や具体的な案件によって、上記の内容だけが規定されたシンプルな基本合意書から、ほぼ最終合意に近い内容の基本合意書まで、締結される内容は様々です。

重要なのは、基本合意書の性質を理解した上で、その時点で自らに最も有利な内容を書面で残しておくことになります。

 

3. まとめ

本コラムでは、基本合意書を締結する目的・基本合意書の内容について解説させていただきました。

基本合意書は必ず締結しなければならないものではなく、場合によっては基本合意書を締結せずに、交渉をいつでも打ち切れるようにしておくという方針もあり得ます。

また、特に上場会社の場合には、締結する基本合意書の内容次第ではプレスリリースを開示しなければならないため、注意が必要となります。

M&Aをご検討中の方で、基本合意書の内容などでお悩みの方は、一度当事務所までご相談ください。

 

※本コラムの内容は、一般的な情報提供であり、具体的なアドバイスではありません。お問い合わせ等ございましたら、当事務所までご遠慮なくご連絡下さいますよう、お願いいたします。

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