弁護士コラム

弁護士コラム「M&Aと事業承継」が掲載されました。

2021.01.05

新型コロナウイルス感染症の拡大により、多くの中小企業の経営に影響が生じています。

従来のビジネスモデルの大幅な改革が必要とされる中で、廃業を選択される経営者もいれば、M&Aによる会社の売却やご親族への事業承継を行うことで、事業の継続を図られる方もおられます。

当事務所にご相談に来られる方にも、M&Aあるいは事業承継により、何とか事業を継続させたいという経営者の方が増えております。

そこで本コラムでは、M&Aと事業承継について、ポイントを解説させていただきます。

 

1. M&Aと事業承継の違い

はじめに、M&Aと事業承継の違いについて解説させていただきます。

かつては事業承継といえばご親族への株式の生前贈与の形を取ることが一般的でした。

もっとも近年では、少子化・職業観の変化等によりご親族への承継が難しくなっているため、社外への引継ぎにより事業承継を行う経営者の方も増えております。

社外への引継ぎによる事業承継はまさにM&Aであり、株式譲渡・会社分割・事業譲渡などの手法を用いることになるため、ご親族への承継よりも手続が複雑で、事業承継の完了までに一定の時間が必要となります。

しかしながら、M&Aの手法を選択することで、経営者が得らえるメリットもあります。

2. M&Aによる事業承継のスキーム

M&Aによる事業承継のスキームとしては、①対象会社の株式を第三者に譲渡する方法(株式譲渡)、②対象会社の事業を第三者に譲渡する方法(会社分割または事業譲渡)が一般的です。

経営者の皆様の視点に立った場合、①・②の最も大きな違いは譲渡代金が誰に支払われるか、という点と思われます。すなわち、株式譲渡の場合には譲渡代金は株主に支払われるのに対し、会社分割・事業譲渡の場合には譲渡代金は対象会社に支払われますので、対象会社が受領した現金をどのように株主に分配するか、別途検討する必要が生じます。

また、対象会社の株主が分散している場合には、どの程度の割合の株主の賛同が得られるのかによって選択すべきスキームも異なってきますので、事業承継をどのようなスキームで行うかは重要なポイントとなります。

 

3. 買主の探索

M&Aによる事業承継の実行は、買主の存在が前提となります。

買主を探索する際、経営者の皆様が、取引先や同業他社に買主となることを打診する方法もありますが、資金に余裕がある場合には、証券会社やM&A仲介会社のサポート得ることも可能です。証券会社やM&A仲介会社は多くの会社に買収提案を行い、買主となることについての関心の有無を確認することができるため、事業承継の成功の確率を高めるのみでなく、価格面でも有利な金額を引き出す可能性を高めることができます。

また、証券会社やM&A仲介会社はいわばM&Aのプロフェッショナルであり、経営者の皆様の様々なお悩みに対応してもらえるため、当事務所ではなるべく証券会社・M&A仲介会社を利用することをお勧めしております。

さらに、最近では事業承継の売主と買主結びつけるマッチングサイトが利用されるケースも増えております。マッチングサイトは証券会社・M&A仲介会社よりも費用が安価であるものの、マッチング後は自ら専門家を探して事業承継の実行のサポートを依頼する必要があるため、信頼できる専門家が存在することが望ましいと言えます。なお、独立行政法人中小企業基盤整備機構の事業引継ぎポータルサイト(https://shoukei.smrj.go.jp/case/)では、事業引継ぎ支援センターによるマッチングを利用した事業承継の事例が掲載されておりますので、マッチングサイトを利用した事業承継のイメージを掴む上で参考になります。

 

4. 経営者の皆様にとってのメリット

ご親族への承継では、後継者になるべく負担がかからないよう生前贈与や信託を利用することが多く、経営者の皆様が経済的利益を享受することに重点が置かれているケースは少ないと思われます。

他方でM&Aによる事業承継では、第三者から対価の支払いを受けて事業承継を行いますので、買収価格によっては株主である経営者の皆様の手元に多くの現金を残すことも可能です。

M&Aによる事業承継を行った後、取得した現金を持って経営者が別の事業を新たに開始することもありますので、事業承継はゴールではなく、新たなスタートともなり得るようです。

 

5. まとめ

本コラムでは、M&Aと事業承継のポイントについて解説させていただきました。

後継者の方が簡単に見つからない場合には、M&Aによる事業承継が選択肢となりますが、ご親族への承継とは異なり社外の第三者が関与することになるため、買収価格や手続の流れが経営者の皆様の想定どおりにならないといったデメリットもあります。事業承継に伴うリスクを事前に把握し、事業承継を確実に成功させるためには、専門家のサポートを得ることが特に重要となります。

事業承継は、準備から実行までに半年から1年程度かかるのが通常です。会社の財務状況に余裕がある時点から準備を開始することで、スムーズが事業承継の実行が可能となります。当事務所では、事業承継・M&Aに関するご相談については、紹介相談を無料で承っておりますので、お気軽にご相談いただければ幸いです。

 

※本コラムの内容は、一般的な情報提供であり、具体的なアドバイスではありません。お問い合わせ等ございましたら、当事務所までご遠慮なくご連絡下さいますよう、お願いいたします。

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