弁護士コラム

弁護士コラム「事業承継と競業避止義務①」が掲載されました。

2021.02.15

事業承継(特に社外の第三者への承継の場合)の実行後に、(前)経営者が契約により競業避止義務を負うことは珍しくありません。

しかしながら、事業承継の実行後、一定期間が経過した後に、この競業避止義務をめぐって争いが生じるケースが増えているように見受けられます。

そこで、事業承継と競業避止義務の関係を、複数回に分けて解説させていただきます。

 

1. 競業避止義務とは

競業避止義務とは、ある者(ここでは(前)経営者を意味します。)が直接又は間接に、対象会社と競合する事業を営むことを禁止する規定のことで、事業承継・M&Aの文脈では株式譲渡契約・経営委任契約において定められることが一般的です。

上記の「間接に」というのは、(前)経営者が自ら競合事業を営むのみでなく、第三者をして競合事業を営ませることも禁止の対象に含まれる趣旨です。また、現在「競合する事業」のみでなく、「将来的に競合する可能性がある事業」を営むことも禁止の対象に含めることがあります。

 

2. 競業避止義務が必要な理由

上記のとおり、競業避止義務は(前)経営者の職業選択の自由を制限するものです。

しかしながら、事業承継の実行直後に(前)経営者が近接した場所に競合する会社を設立してしまうような極端なケースを想定しますと、後継者(特に資金調達して(前)経営者から株式を取得したような場合)にとってはこのような行為は禁止する必要があります。

そこで、事業承継の実行後、あるいは事業承継後も(前)経営者が顧問的な立場で対象会社の経営に関与している場合にはその関与が終了したときから、競業避止義務を課すことが一般的な実務となっています。

 

3. 競業避止義務をめぐる紛争とは

では、冒頭に記載した競業避止義務をめぐる紛争というのは、具体的にはどのようなものなのでしょうか。

後継者の立場からすれば、競業避止義務はなるべく強い内容にしたいところです。そのため、場所的・時間的な制限を設けることなく、一律の競業避止義務を契約で規定してしまうのですが、事業承継からある程度時間が経つと(前)経営者に再びビジネスをしたいという気持ちが生じることも少なくありません。しかしながら、(前)経営者に場所的・時間的な制限のない競業避止義務が課されていると、競合事業を行うと義務違反となってしまう可能性があります。

このような事態に陥った(前)経営者としては、①ひとまず後継者に相談する、②後継者に相談せずに競合事業を開始する、③競合事業を諦める、といった選択肢があるのですが、②を選択し、それが後継者に判明してしまった結果、(前)経営者が後継者から訴えられてしまう、というのが競業避止義務をめぐる紛争のうち特に多いパターンとなります。

 

4. 競業避止義務違反を主張された場合の対応について

それでは、(前)経営者が後継者から競業避止義務違反を主張された場合には、どのように対応すべきなのでしょうか。

競業避止義務の限界を含め、次回のコラムで解説させていただきます。

 

※本コラムの内容は、一般的な情報提供であり、具体的なアドバイスではありません。お問い合わせ等ございましたら、当事務所までご遠慮なくご連絡下さいますよう、お願いいたします。

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