弁護士コラム

弁護士コラム「事業譲渡の流れと契約のポイント」が掲載されました。

2021.08.15

事業承継・M&Aにおいて、事業譲渡は頻繁に用いられる手法です。特に売主が個人事業主の場合には、事業(営業)譲渡のみが選択肢となるケースも少なくありません。

一方で、株式譲渡と比較すると手続や契約内容が複雑ですので、事業承継・M&Aにあたって事業譲渡を選択する際には注意すべきポイントがいくつかあります。

そこで本コラムでは、事業譲渡の流れと事業譲渡契約のポイントについて解説させていただきます。

なお、事業譲渡と類似した手法である会社分割との違いについては、コラム『事業譲渡と会社分割の選択』をご参照ください。

 

1. 事業譲渡とは

そもそも「事業譲渡」という法律用語については法律に明確な定義はありません。

事業承継・M&Aの実務においては、会社や個人事業主が営んでいる事業の全部または一部を第三者に譲渡する取引行為のことを、事業譲渡と呼称することが一般的です。

「事業譲渡」という用語について注意が必要となるのは、例えば事業に利用している機械の譲渡のような、単純な資産の売買については「事業譲渡」に該当しない可能性が高い、という点です。

まれに、複数の事業用資産の売却を「事業譲渡契約」と構成されているケースを見受けますが、取引の対象が「事業」と呼べるような一体性のあるものでなければ、いわゆる事業譲渡には該当しないものとご理解ください。

 

2. 事業譲渡の流れ

事業譲渡による事業承継・M&Aの流れは、一般的には以下のとおりです。

 

① 売主と買主による基本合意(基本合意なしのケースもあります。)

② 買主による対象事業のデューデリジェンス

③ 事業譲渡契約の交渉

④ 事業譲渡契約の締結

⑤ 事業譲渡の実行に向けた準備

⑥ 事業譲渡の実行(クロージング)

 

上記のうち、事業譲渡で特に注意しなければならないのは⑤・⑥と考えられます。

事業譲渡においては、承継対象となっている取引先との契約、従業員との雇用契約、知的財産権などについて、それぞれ必要な手続を行わなければならないためです。

株式譲渡の場合には、株式譲渡を実行しても基本的に事業そのものに変化はありませんが、事業譲渡の場合にはその事業を営む主体に変更がありますので、それに伴い個別に手続を取る必要が生じます。

さらに、承継する従業員との雇用契約についても、そのまま承継するパターンのみでなく、一度売主との間の雇用契約を終了した上で、クロージング日付で買主との間で新たな雇用契約を締結するパターンもありますので、事業譲渡契約の締結から事業譲渡の実行までの準備にはかなりの労力を要します。

 

3. 事業譲渡契約のポイント

次に事業譲渡契約のポイントについて解説させていただきます。

大きな枠組みは株式譲渡と同じで、以下の項目から構成されることが通常です。

 

① 事業譲渡の対象

② 事業譲渡の対価

③ 事業譲渡の前提条件

④ 当事者の誓約事項(コベナンツ)

⑤ 表明保証

⑥ その他の一般条項

 

特に注意すべきポイントは、①の事業譲渡の対象の特定です。

事業譲渡の場合には、契約において承継する権利義務を特定することが必須ですので、漏れがないようにするだけでは足りず、不要な権利義務を承継しないようにしなければなりません。

承継する権利義務を、「〇〇事業に関する一切の権利義務」のような抽象的な記載にしてしまうと、買主が想定外の負債を抱えてしまうリスクがありますので、可能な限り承継する権利義務は特定するようにしましょう。

また、③の事業譲渡の前提条件、④の当事者の誓約事項(コベナンツ)については、上述した事業譲渡契約の締結から事業譲渡の実行までの準備と大きく関連しますので、こちらもデューデリジェンスの結果に基づき適切に規定しなければなりません。

そのような意味で、株式譲渡契約よりも事業譲渡契約の方が、個々の取引内容に応じたアレンジが必要となります。

 

4. まとめ

本コラムでは、事業譲渡の流れと事業譲渡契約のポイントについて紹介させていただきました。

事業譲渡は、手続の複雑さなどが理由で会社分割ほど頻繁に利用されていませんが、買主が承継する従業員を個別に選択したい場合、事業譲渡を選択せざるを得ないケースもあります。

当事務所では、事業譲渡を含めたあらゆる手法の事業承継・M&Aをサポートしております。

事業承継・M&Aでお悩みの方は、一度当事務所までご相談ください。初回相談は無料で承っておりますので、お気軽にご連絡ください。

 

※本コラムの内容は、一般的な情報提供であり、具体的なアドバイスではありません。お問い合わせ等ございましたら、当事務所までご遠慮なくご連絡下さいますよう、お願いいたします。

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