弁護士コラム

弁護士コラム「中小企業における資本業務提携契約の活用法」が掲載されました。

2021.11.20

M&Aの手法には、M&Aを行う目的に応じて様々なものがあります。最も一般的なものは売主が買主に対して株式を譲渡する株式譲渡ですが、M&Aの当事者のうち、いずれか一方のみが売主あるいは買主になるのではなく、当事者が相互に株式を保有しあう形でのM&Aもあり得るところです。

このような、当事者が相互に株式を保有しあう形でのM&Aは資本提携と呼ばれますが、単なる資本提携よりも資本「業務」提携という用語の方が、より頻繁に見受けられると思われます。

本コラムでは、そもそも資本業務提携契約とは何か、また中小企業における資本業務提携契約の活用法について、解説させていただきます。

 

1. 資本業務提携契約とは

上記のとおり、当事者が相互に株式を保有しあう形でのM&Aを資本提携と呼んでいますが、資本提携は株式譲渡よりも当事者の対等性が重視される傾向にありますので、相互に保有しあう株式の割合は、発行済株式の過半数に満たない割合で行われる方が多いと思われます。

資本提携が行われる背景、言い換えれば当事者が資本提携を行う目的は、自らの事業と相手方の事業との間にシナジーがあるため、資本関係を形成してシナジーを実現することにありますが、単に株式を持ち合うだけではシナジーの実現には至りません。

むしろ、当事者間で業務に関して合意を形成し、当該合意内容に従って事業を行うことがシナジーの実現につながります。このような業務に関する合意を「業務提携契約」と呼んでおり、業務提携と資本提携を同時に行う際の契約が、資本業務提携契約となります。

 

2. 資本業務提携契約の内容

資本業務提携契約の内容は、大きく分けると①株式の取扱いに関する事項と、②業務提携に関する事項になります。

①については、新株を発行するのか、自己株式を処分するのか、あるいは第三者が保有している株式を譲り受けるのかなど、株式の持ち合いをどのような形で行うかについての取決めとなります。

②については、当事者間での具体的な業務の連携の仕方を取り決めることになりますが、場合によっては従業員の相互の出向など人事についても合意内容に含めるケースがあります。なお、相互の役員派遣について取り決めるケースもあります。

資本業務提携契約は、株式譲渡契約や事業譲渡契約よりも契約内容をどのようにアレンジするかの自由度が高いため、いわゆる雛形のようなものを想定しづらく、むしろ当事者の要望をどこまで明確に取り決められるかに注意して契約書を作成する必要があります。

さらに進んで、資本業務提携契約を大枠として、その中で事業譲渡・会社分割などのM&Aの実行について取り決めるケースもあります。

 

3. 中小企業における資本業務提携契約の活用法

上場会社が資本業務提携契約を活用することは珍しくありませんが、中小企業においては、資本業務提携契約の活用が進んでいるとは言い難い状況です。

しかしながら、例えば経営が苦しい中小企業のオーナー経営者が、経営権までは失いたくないものの、同業他社と連携して活路を見出したいといったようなケースでは、資本業務提携契約は有効な手段となります。

また、第三者への事業承継を検討している中小企業のオーナー経営者が、承継先である買主候補と自社との間にシナジーがあるのかを確認するために、ひとまず資本業務提携契約を締結し、シナジーが見込まれる場合にはご自身が保有する株式を買主候補に譲渡する、といったことも可能です。

資本業務提携契約は中小企業にとっても様々な活用法があるM&Aの手法であり、今後のさらなる活用が期待されます。

 

4. まとめ

本コラムでは、資本業務提携契約とは何か、また中小企業における資本業務提携契約の活用法について、ポイントを解説させていただきました。

中小企業において資本業務提携契約の活用が進んでいない理由の一つに、資本業務提携契約についてアドバイス可能な専門家が少ないことが挙げられます。

そのため、当事者の一方のみが資本業務提携契約について知見を有しており、相手方に不利な内容の資本業務提携契約が締結されてしまうようなケースも見受けられます。

中小企業のオーナー経営者の方で、資本業務提携契約の活用を検討している、あるいは資本業務提携契約の締結を持ち掛けられているが進め方が分からない、といったお悩みがあれば、一度当事務所までご相談ください。

 

※本コラムの内容は、一般的な情報提供であり、具体的なアドバイスではありません。お問い合わせ等ございましたら、当事務所までご遠慮なくご連絡下さいますよう、お願いいたします。

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