2021年に適時開示ベースで公表されたM&Aの件数は877件であり、リーマンショック後では最も多い数字となりました。これに非上場会社同士のM&Aを加えると、2021年だけで1000件以上のM&Aが行われているものと推測されますが、国内市場が縮小している状況が続く限り、M&Aを活用した企業の成長戦略はさらに拡大していくものと考えられます。
当事務所でも、事業承継の文脈ではなく純粋なM&Aのご相談をいただく機会が増えており、M&Aが活性化していることを実感しています。
1. 経営者のM&Aに対する姿勢
しかしながら、他の経営者や証券会社からM&Aの打診(株式譲渡の打診)を受けた経営者の方の中には、M&Aを実行することによる経済的なメリットは理解されても、M&Aそのものに拒否感を示される方も少なくありません。M&Aといえば海外のファンドによる日本企業の買収・乗っ取りという一昔前のイメージが、経営者のM&Aに対する姿勢に大きな影響を与えているものと思われます。
もっとも、買手から示されたM&Aの条件などを見ると、買手に一方的に有利な内容となっているケースもありますので、M&Aにつき一定程度の警戒感を持つこと自体は正しいと考えられます。
当事務所では、売主である中小企業経営者をサポートすることが多いため、買手となる企業をサポートする際にも、上記のような中小企業経営者の心情にも配慮した条件の提示を心がけるようにしております。
2. どのようにM&Aを進めるべきか
中小企業のオーナー経営者にとって、M&Aを進める上で大切なのは買手候補とのコミュニケーションです。買手候補がどのような理由でM&Aを検討し、なぜ自社を対象にしたのかを理解しなければ、提示されたM&Aの条件が公平なものか、経営者にとってもメリットがあるものかは判断できません。
そのためには、買手候補と密にコミュニケーションを取り、M&Aのプロセスの中で双方に誤解が生まれないようにすることが極めて重要となります。
買手候補とのコミュニケーションについては、経営者自らがやり取りをすることもあれば、フィナンシャル・アドバイザーや弁護士のような専門家が窓口となることもあります。
但し、経営者にとってM&Aは人生で一度あるかないかの取引ですので、買手候補がM&Aに慣れており経験・情報に格差があるような場合には、専門家がコミュニケーションの窓口となった方が安全ではあります。
また、当事務所では遅くともM&Aの契約交渉の段階に至るまでには弁護士に相談されることをお勧めしております。
3. まとめ
本コラムでは、経営者のM&Aに対する姿勢についての考え方を紹介させていただきました。M&Aは日常的な取引ではないため、何がポイントなのかも分からないまま話が進んでしまい、気付けば不利な条件で契約してしまったというケースも少なくありません。
当事務所では100件以上のM&Aをサポートした経験のある弁護士が、買主・売主の双方の立場からM&A全般に関するアドバイスをさせていただいております。M&Aでお悩みの中小企業経営者の皆様は、ぜひ当事務所までご相談ください。
※本コラムの内容は、一般的な情報提供であり、具体的なアドバイスではありません。お問い合わせ等ございましたら、当事務所までご遠慮なくご連絡下さいますよう、お願いいたします。