弁護士コラム

弁護士コラム「スタートアップへの投資と契約②」が掲載されました。

2023.06.12

以前のコラム「スタートアップへの投資と契約①」では、スタートアップへの投資の流れと、投資契約・株主間契約の概要について述べさせていただきました。

投資契約・株主間契約はスタートアップへの投資における基本的な契約と言えますが、そもそもスタートアップへの投資自体が非日常的な取引であるため、これらの契約において何を定めるべきか、交渉となる事項は何かといった点において、投資家とスタートアップの間に情報格差があることが頻繁に見受けられます。

そこで本コラムでは、投資契約・株主間契約の内容と、契約交渉の場面での留意点について解説させていただきます。

 

1. 投資契約の内容

投資契約とはその名のとおり、投資家によるスタートアップへの投資に関する合意事項を規定する契約です。なお、スタートアップへの投資は一般的に、投資家に対する第三者割当増資の方法でなされます。

投資契約において規定される事項のうち特徴的なものとしては、①1株あたりの発行価格や発行する株式数などの条件、②新たに発行する株式が種類株式の場合には当該種類株式の内容、③スタートアップにおける表明保証、④投資家による払込みの前提条件、⑤投資の前後における当事者(主にスタートアップ)の義務などが挙げられます。

経済的な側面からは、上記のうち①・②が重要となりますが、投資契約の締結後、投資の実行までの間に何らかの事態が生じ得ることを考慮すると、③・④についても適切に規定することが重要となります。

なお、スタートアップへの投資はM&Aとは異なり会社の支配権に変更が生じないことや、スタートアップ側でデューディリジェンスに対応できる体制が整っていないことなどが理由となって、デューディリジェンスが行われないケースも珍しくありません。もっとも、デューディリジェンスが行われない結果、投資家側は当該スタートアップも固有の問題を把握できず、結果として網羅的な表明保証を求めることになり、それを受けてスタートアップも不利な内容の投資契約を締結してしまうことがあります。

そのため、限定的な範囲であってもデューディリジェンスを行い、その結果を踏まえて投資契約の交渉を行う方が、スタートアップ・投資家の双方が納得できる結果になると思われます。

 

2. 株主間契約の内容

株主間契約とは、投資家がスタートアップの株式を取得し、創業者・投資家という異なる利害関係を持つプレイヤーがスタートアップの株主となったことに伴い、スタートアップの運営に関する事項や、株式の取扱いについての合意事項を規定する契約です。

スタートアップの運営に関する事項としては、取締役・監査役の指名権、取締役会に参加するオブザーバーの指名権、(創業者・投資家の持分割合にかかわらず)重要事項については全株主の同意を要する事項の規定などがあります。

なぜこのような規定が必要になるかというと、単純な持分割合に従いスタートアップの運営を決定できるとなると、通常は創業者の持分割合が過半数(あるいは2/3以上)であるため、投資家がスタートアップの意思決定に何ら関与できず、投資するインセンティブが失われるためです。

また、株式の取扱いについての合意事項とは、First Refusal RightCall OptionPut OptionDrag Along RightTag Along Rightといった、株式の売買に関する取決めが中心となります。これらの規定の詳細については改めてご説明させていただきたいと思います。

 

3. 契約交渉の場面での留意点

スタートアップへの投資は、投資家・スタートアップの双方にとってメリットがあることが前提となっていますが、投資契約・株主間契約の内容に関しては、スタートアップに不利な内容の契約となっていることが少なくありません。

公正取引委員会が2022331日に公表しているスタートアップとの事業連携及びスタートアップへの出資に関する指針においては、「キャッシュフローや知財・法務部等が脆弱なスタートアップが、その脆弱性を原因として、不当な契約を甘んじて受け入れてしまう、又は無防備に極めて不当な契約を受け入れてしまう」、「従来の取引慣行に従った大企業が、下請契約等と同様な形で契約締結をスタートアップに迫った結果、交渉に時間がかかってしまう」といった記載があるように、契約交渉の場面では投資家・スタートアップの間に、それぞれのアドバイザーの能力・経験を含め、かなりの格差があるのが実情です。

もっとも、投資契約・株主間契約の内容について一概にこの条項が重要というのは難しく、投資家の属性やスタートアップの資本政策等により重視すべき事項は異なりますので、弁護士のサポートを得ずに進める場合には、予め投資契約・株主間契約において規定される主要な項目について理解した上で、自らが守るべきポイントは何か、反対に譲歩できるポイントは何かを、慎重に検討することが必要となります。

 

4. まとめ

本コラムにおいては、投資契約・株主間契約の内容と、契約交渉の場面での留意点について解説させていただきました。

投資契約・株主間契約については、内容が専門的であるため適切なアドバイザーにレビューを依頼することが難しく、また雛形のようなものが出回っていることも相まって、スタートアップに不利な内容の契約が締結される傾向にありますが、このような事態は、スタートアップへの投資を促進する上では好ましいことではありません。

投資家のみでなく、スタートアップ側も契約内容を十分に理解した上で、双方にとってフェアな内容の契約が締結される文化が醸成されることが、日本においてスタートアップが成長するために必要な要素であると考えています。

 

※本コラムの内容は、一般的な情報提供であり、具体的なアドバイスではありません。お問い合わせ等ございましたら、当事務所までご遠慮なくご連絡下さいますよう、お願いいたします。

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