弁護士コラム

弁護士コラム【事業承継・M&A】専門家にはいつから相談すべきか?

2023.07.10

 中小企業の経営者の皆様が親族内・親族外への事業承継や、外部の第三者へのM&Aを検討されるとき、まず考えるのは「どのタイミングで事業承継・M&Aを実行するべきか?」という点かと思われます。

とりわけ経営者の方が心身ともに健康で、当面はご自身のもとで事業を継続することが可能な場合には、会社の経営から離れることに心理的抵抗があるのが普通で、事業承継・M&Aについて考えるのは引退の直前、あるいはM&A仲介会社などからM&Aの話が持ち掛けられたタイミングではないでしょうか。

さて、いざ事業承継・M&Aについて本格的に検討を開始されると、弁護士や税理士といった専門家のサポートも必要なことを認識されると思います。

では、事業承継・M&Aについて検討するとき、弁護士・税理士などの専門家にはいつから相談すべきなのでしょうか。この点についての私の考え方を、本コラムではお伝えさせていただきたいと思います。

 

1. なぜ専門家のサポートが必要なのか?

現時点で事業承継・M&Aの本格的な検討を開始されていない経営者の方にとっては、そもそも専門家のサポートがなぜ必要なのかについて疑問を持たれると思いますので、まずはその点についてご説明させていただきます。

事業承継・M&Aは、株式譲渡や事業譲渡といった取引行為ですが、非日常的な取引であり、「過去に株式譲渡・事業譲渡を過去に何度も行っており、契約の内容や税務リスクなどを含め、十分な知識がある」という経営者の方はほとんどおられないと思います。

例えば、株式譲渡契約において株式の売主となる経営者の方が買主に対してどの程度のリスクを負うことになるのか、事業譲渡のスキームを採用した場合に買主に税務メリットが生じ、その分を譲渡代金に上乗せすることができるのかなど、経営者の皆様にとって有利になること、不利になることの両面をアドバイスし、サポートするのが専門家の役割です。

他方で、株式譲渡・事業譲渡が非日常的な取引である結果、これらの取引について十分な経験と知識を有する専門家が少ないのも事実です。

経営者の皆様が専門家のサポートが必要と感じられた際、周りにM&A・事業承継を専門としている弁護士・税理士などが不在の場合には、まずは顧問弁護士や顧問税理士などを通じて専門家の探索を行われると良いと考えております。

 

2. 専門家に相談すべき時期について

適切な専門家を見つけることができたとして、その専門家への相談はいつから開始すべきなのでしょうか。

一般論としては、事業承継・M&Aの準備を開始した時点から相談する方が良いということになります。また、M&Aを検討されており、候補先企業の選定や譲渡対価について予めしっかり検討してから進めたいというケースであれば、初期の段階からフィナンシャル・アドバイザーへの相談を行う方が望ましいですが、突き詰めて考えると、経営者の皆様がどのような形で事業承継・M&Aを実行しようとしているかにより、専門家への相談のタイミングも変わってくると思われます。

例えば、経営者の方がご子息・ご息女に株式を贈与する親族内承継が確定したスキームであれば、大きな論点は税務くらいですので、必ずしも経営者の方がご子息・ご息女に話をする時点から専門家へ相談する必要はなく、株式を贈与する前に税理士に相談すれば足りると思われます。

また、長期間にわたり関係のある取引先企業に自社の事業を譲渡するようなケースでは、両社間で事業譲渡の譲渡対価について合意できているのであれば、事業譲渡契約を適切な内容とすれば十分ですので、譲渡対価について合意できたタイミングで弁護士に相談すれば良いと思われます。

何が何でも専門家に相談すればよいというものではなく、目的に応じて必要な範囲で専門家のサポートが得られれば足りるはずですので、専門家に相談するタイミングについても目的に応じて異なるというのが、私の考え方です。

 

3. まとめ

本コラムでは、事業承継・M&Aについて検討するとき、弁護士・税理士などの専門家にはいつから相談すべきなのかについて、私の考え方をお伝えさせていただきました。

この点は、専門家によって考えが異なる部分でもあり、また一般論としては早ければ早いほどトラブルを予防できることもありますので、基本的には悩んだタイミングで相談していただくということで問題はありません。

但し、単純な親族内での株式の贈与にもかかわらず、弁護士が契約以外の部分で積極的に関与することを希望したり、事業承継・M&Aの専門家でないにもかかわらず、経営者の方に「自分に全て任せほしい」などと言ってくる事例もありますので、専門家の選定は慎重に行っていただきたいと考えております。

本コラムが、中小企業の経営者の皆様が事業承継・M&Aについて検討される上で、ご参考になれば幸いです。

 

※本コラムの内容は、一般的な情報提供であり、具体的なアドバイスではありません。お問い合わせ等ございましたら、当事務所までご遠慮なくご連絡下さいますよう、お願いいたします。

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