弁護士コラム

弁護士コラム「医療法人の事業承継に必要な手続とは?」が掲載されました。

2023.08.07

八木&パートナーズ法律事務所-弁護士八木病院などを運営する医療法人については、医療法人の公益性を理由に、株式会社とは異なる法制度が適用されています。

その結果、医療法人の事業承継の手続についても、株式会社における株式の譲渡・代表取締役の交替といった単純なものではなく、医療法人に特有の手続が必要となっております。

当事務所では、医療法人の経営者、あるいは医療法人の経営権の取得を検討されている方などからご相談をいただくことがありますが、そもそも医療法人の事業承継のためにはどのような手続が必要になのかを知りたいという方が大半です。

そこで本コラムでは、医療法人の事業承継に必要な手続について、概要をご説明させていただきます。

 

1. 医療法人の特殊性

まず、株式会社とは異なる医療法人の特殊性について、簡単にご説明させていただきます。

医療法人については会社法ではなく医療法の規定が適用されるところ、2023年現在、新たに医療法人を設立する場合には、株式会社における株式に相当する「出資持分」のない医療法人しか設立できません。これは、2007年の医療法改正により、出資持分がある社団法人としての医療法人が新たに設立することができなくなったためです。

その結果、現在では「出資持分のある医療法人」(以下「持分あり医療法人」といいます。)と「出資持分のない医療法人」(以下「持分なし医療法人」といいます。)の、2種類の医療法人が存在しています。

そして、これら2種類の医療法人につき事業承継に必要な手続が異なるため、以下では持分あり医療法人と持分なし医療法人に分けて、事業承継の手続をご説明いたします。

 

2. 持分あり医療法人の事業承継

まず、持分あり医療法人の事業承継については、①出資持分の譲渡、及び②理事の交替という手続が必要となります。

①出資持分の譲渡については、株式会社の事業承継において株式を後継者に譲渡するのと同様で、後継者に医療法人の持分を譲渡することになります。

他方で、②理事の交替については医療法人の事業承継に特有の部分となります。

医療法人の理事長は、原則として医師または歯科医師である必要があり、したがって医師でない個人や法人が医療法人の理事長になることはできません。

そのため、持分の承継について合意ができても、新たな理事長を確保しなければ、事業承継がいつまで経っても完了しない事態となってしまいます。

医療法人の事業承継手続において最も困難なのは、現在の理事長に代わる、新たな理事長となる医師の確保と言っても過言ではありません。

 

3. 持分なし医療法人の事業承継

次に、持分なし医療法人の事業承継については、持分が存在しないため、医療法人の理事長・理事を、後継者が指名する方に全て入れ替える手続のみとなります。

ここで注意が必要なのは、持分なし医療法人の場合には、持分の譲渡のような取引行為が存在しないため、現在の理事長・理事が、承継先から直接対価を受け取ることができないという点です。

そのため、持分なし医療法人の場合には、理事長・理事の交替に伴い退職慰労金が支払われることになりますが、退職慰労金の金額については、予め合意し、契約書において明確に規定しておく必要があります。

 

4. まとめ

本コラムでは、医療法人の事業承継に必要な手続について、概要をご説明させていただきました。

上記は医療法人の事業承継の大きな枠組みのみで、実際に事業承継を行う場合には、医療法人が使用している資産のうち、理事長が個人で所有している資産の処理なども問題となります。

また、地方所在の医療法人では、事業承継について相談できる専門家の数が少ないため、十分な準備ができない中で事業承継を実行し、後にトラブルとなるケースも少なくありません。

当事務所では、事業承継のご相談については初回相談を無料で承っておりますので、医療法人の事業承継でお悩みの方は、お気軽にご相談いただければ幸いです。

 

※本コラムの内容は、一般的な情報提供であり、具体的なアドバイスではありません。お問い合わせ等ございましたら、当事務所までご遠慮なくご連絡下さいますよう、お願いいたします。

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