弁護士コラム

弁護士コラム「M&A・事業承継のトラブル・訴訟対応」が掲載されました。

2026.10.26

経営者の高齢化や後継者不足を背景に、中小企業のM&A・事業承継が急増する一方で、当事者間のトラブルや、M&A仲介会社などのアドバイザーとの紛争も相次いでいます。

M&A・事業承継に関する紛争は、株式譲渡契約などの契約実務や手続の流れを理解していなければ、適切な対応はおろか、論点がどこにあるのかを把握することも難しいため、一般的な民事紛争とは異なる専門性が求められます。

そこで本コラムでは、実際に生じやすいM&A・事業承継のトラブルの類型と、その予防策・対応策を解説いたします。

 

1. M&A・事業承継に関連して生じるトラブルの類型

(1)売主の表明保証違反をめぐる紛争

株式譲渡契約などの最終契約には通常、会社の財務内容や簿外債務の不存在などを売主が保証する「表明保証条項」が定められます。

クロージング後に未払残業代・税務問題・訴訟リスクなどが発覚すると、買主から売主に対して損害賠償(補償)請求がなされることがあり、「会社を売却して引退したはずが、多額の請求を受けた」という事態にもなりかねません。

最終契約の文言や売主の認識、損害額、相当因果関係の立証などが争点となる、M&A後の紛争の典型例です。

 

(2)M&A・事業承継実行後の契約の解除・代金不払い

M&A・事業承継の実行後に一方が契約の解除を主張したり、分割払いの譲渡代金の支払を拒んだりするケースもあります。

近年は、代金の支払を受けられないまま経営権だけを奪われる悪質な事案(いわゆる「悪質M&A」)も報道されています。

M&A・事業承継はいったん実行されると解除による原状回復は極めて困難であるため、紛争が複雑化しやすく、早期の専門家への相談が重要です。

 

(3)M&A仲介会社・アドバイザーとの紛争

仲介会社は売主・買主の双方から手数料を受け取る立場にあり、利益相反の問題が構造的に存在します。

当事務所において相談に来られる方の中には、以下のようなトラブルに巻き込まれているケースが多くみられます。

 

・十分な説明のないまま不利な条件で契約を進められた
・買主候補の実態(資力・経営能力)の調査が不十分であった
・高額な手数料や、テール条項・専任条項をめぐる争い

 

なお、M&A仲介会社との間の契約(少なくともM&A仲介会社から提示されるドラフト)は、経営者に不利な内容となっていることが通常です。M&A仲介会社との間でトラブルが生じる可能性を踏まえて、M&A仲介会社との間で契約を締結する際には、あらかじめM&A・事業承継に詳しい弁護士に相談することが重要です。

 

(4)経営者保証をめぐるトラブル

中小企業では、会社の借入金に経営者個人が連帯保証をしているケースがほとんどです。

M&A・事業承継の実行時に保証解除の手当てを怠ると、譲渡後も前経営者が保証債務を負い続け、金融機関から請求を受けるおそれがあります。

「経営者保証に関するガイドライン」の活用を含め、クロージングまでに解除の道筋をつけておくことが不可欠です。

 

2. M&A・事業承継に関するトラブルの予防策

上述したM&A・事業承継の紛争の多くは、事前に予防することが可能です。

①M&A・事業承継の各段階における契約(仲介契約・基本合意書・株式譲渡契約など)について売主側の立場に立った弁護士のリーガルチェックを受けること、②デュー・ディリジェンスに適切に対応し、開示すべき情報を整理・開示しておくこと、③経営者保証・借入金の処理を実行前に確定させること、④実行後の体制(経営委任・引継ぎ・競業避止)を最終契約で明確化しておくこと、が重要です。

 

3. トラブルが生じた場合の対応

もしM&A・事業承継に関するトラブルが生じた場合は、初動対応が極めて重要です。

まず、最終契約やデュー・ディリジェンスで開示した資料、M&A仲介会社や相手方との交渉過程のメールなどの関係資料を保全・整理してください。

そのうえで、M&A仲介会社や相手方に対して勇み足で連絡や合意をする前に、弁護士等の専門家へ相談することをお勧めします。

表明保証違反の請求も、補償の上限額・期間制限などにより争える場合があり、M&A仲介会社からの手数料請求も条項の有効性を検討する余地があります。

交渉で解決しない場合には調停・訴訟を検討することになりますが、M&Aに関する訴訟は争点が専門的・複雑であり、M&Aの実務を理解した弁護士による戦略的な対応が求められます。

 

4. まとめ

M&A・事業承継は、長年かけて築いてこられた大切な会社・事業を次の世代につなぐための重要な取引です。

当事務所では、M&A仲介会社との契約や株式譲渡契約のリーガルチェックなどの予防的なサポートから、表明保証違反・契約解除・仲介会社との紛争などに関する交渉・訴訟対応まで、一貫したサポートを提供しております。

M&A・事業承継のトラブルにお悩みの経営者の方は、どうぞお気軽にご相談ください。初回のご相談は無料でお受けしておりますので、以下のお問い合わせフォームよりお気軽にお問い合わせください。

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 弁護士 八木 啓介(東京弁護士会所属)
大手法律事務所のM&Aチームに加え、2016年~2017年にかけて野村證券株式会社企業情報部にてフィナンシャル・アドバイザー(FA)として勤務し、多数のM&A・事業承継の実行を支援。弁護士とFA双方の実務経験を活かし、特に売主側でのM&A・事業承継支援を得意とする。これまでのM&A・事業承継の案件実績は250件以上で、医療法人のM&A・事業承継の支援実績も多数。
執筆・メディア実績:『M&A実務の基礎』(商事法務)、日本経済新聞『悪質M&A、表明保証に注意』、週刊東洋経済『中小M&A急増で相次ぐトラブル』など
最終更新日:2026年10月26日
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