弁護士コラム

弁護士コラム「生前贈与による事業承継の留意点」が掲載されました。

2020.10.21

事業承継の手法には様々なものがありますが、ご息女・ご子息に対して株式を生前贈与する手法は親族内承継における一般的な手法であり、現在でも多くの経営者がこの手法により事業承継を行っていると思われます。

そこで本コラムでは、生前贈与により事業承継を行う場合の留意点について解説させていただきます。

 

 

1. 生前贈与のタイミング

株式を生前贈与することを決めた場合でも、どのタイミングで生前贈与を実行するのかは難しい問題です。

生前贈与のタイミングを決定する上では、後継者が負担することになる贈与税を支払うための資金の有無や会社の業績などを考慮しなければなりませんが、経営者の意向も重要となります。

生前贈与により経営者は会社の支配権を失うことになり、法律上は株主として会社の意思決定に関与することができなくなりますので、例えば経営者が後継者に会社の経営をゆだねても問題ないと判断し、心情的な抵抗が薄くなるまでは、生前贈与の実行は難しいと思われます。

一方で後継者の方からすれば、「いつになれば生前贈与を受けられるのか?」という不安を抱かれる場合も多く、生前贈与がなかなか実行されない結果、事業承継が失敗してしまうケースもあります。

 

2. 特例事業承継税制の利用

特例事業承継税制とは、贈与(無償のものに限られます。)または相続の場面において税務上のメリットが得られる制度で、経営者がご息女・ご子息に対して株式を生前贈与する際に利用することができます。

そのため、生前贈与による事業承継のケースでは、当該制度の利用の有無についてもご検討いただくことが望ましいです。

特例事業承継税制の大きなメリットとして、贈与税の納税猶予、また経営者の死亡による当該贈与税の免除などがあります。

特例事業承継税制については特例事業承継税制の注意点においても紹介しておりますので、こちらのコラムもご参照ください。

 

3. 相続人の遺留分への配慮

経営者の相続人に、生前贈与を受ける後継者以外の方がいる場合には、後継者以外の相続人の遺留分について配慮する必要があります。

すなわち、後継者への株式の生前贈与により遺留分の侵害が生じてしまう場合には、経営者の死後に相続人間で争いが発生するリスクがありますので、事前に何らかの手当をしておくことが望ましいと思われます。

このような事業承継に伴う遺留分侵害のリスクについては、事業承継と遺留分①でも解説させていただいておりますので、こちらのコラムもご参照ください。

 

4. まとめ

本コラムでは、生前贈与により事業承継を行う場合の留意点について解説させていただきました。

生前贈与は一見するとシンプルで、弁護士・税理士などに相談せずに進められる方も多いと思いますが、上記のようなリスクもありますので事前にご相談されることをお勧めしております。

特に、特例事業承継税制についてはアドバイスできる専門家も限られておりますので、お悩みの方は一度当事務所までご相談ください。特例事業承継税制に詳しい税理士とも連携の上でアドバイスをさせていただきます。

 

※本コラムの内容は、一般的な情報提供であり、具体的なアドバイスではありません。お問い合わせ等ございましたら、当事務所までご遠慮なくご連絡下さいますよう、お願いいたします。

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