弁護士コラム

弁護士コラム「事業再生・私的整理とM&A」が掲載されました。

2020.11.03

当事務所は中小企業とその経営者の方を主にサポートしておりますが、ご相談に来られる方には積極的にM&Aを行いたいという方もいれば、会社の業績が悪化しているなどの理由で早期に会社を第三者に売却したいという方もおられます。

会社の業績が悪化している場合、私的整理の枠組みで金融機関と交渉を行い、借入金の返済を一時的に猶予させるリスケジュールを実行することなどで業績が回復するケースもありますが、事業そのものが構造的に立ち行かず、スポンサーに事業を譲渡することを選択せざるを得ないケースも珍しくありません。

後者のケースは事業再生・私的整理の文脈でM&Aを実行することになり、難易度が非常に高いものではありますが、最近ではこのようなご相談を承ることも増えております。

そこで本コラムでは、経営者の連帯保証債務の処理を含めて、特に重要なポイントを解説させていただきます。

 

1.スポンサーの探索

リスケジュールなどによる自主再建が困難な場合、会社分割や事業譲渡の手法によりスポンサーに事業を承継させることで、従業員の雇用や取引先との関係の維持を目指すことになります。そのため、まずはスポンサーを見つけることが重要になります。

そしてスポンサーを探索する際には、通常は証券会社やM&A仲介会社がフィナンシャル・アドバイザーとなり、初期的には会社名を伏せた状態で様々な候補先に打診し、その中でスポンサーとなることに関心を示し、秘密保持契約を締結した候補先に対して会社名を開示し、基礎的な情報をインフォメーション・パッケージとして配布することになります。

もっとも、業績が悪化しておりフィナンシャル・アドバイザーを雇うことが難しい場合には、弁護士や公認会計士がスポンサー候補を探索することもありますが、当事務所では可能な限りフィナンシャル・アドバイザーへの依頼をお勧めしております。

 

2. 金融機関との交渉

会社に金融機関からの借入れがあり、スポンサーから受領する事業の譲渡対価をもって借入金の全額を返済できない場合には、金融機関に対して債権の一部カットの依頼を行うことになります。

この金融機関との交渉の際、中小企業であれば、全国に設置されている中小企業再生支援協議会を利用することが可能です。

中小企業再生支援協議会は、産業競争力強化法に基づき、経済産業大臣の認定により設置された機関で、金融機関との交渉や再生計画案の策定のサポートを行ってくれますので、当事務所でも中小企業再生支援協議会と連携して金融機関との交渉を行うケースもあります。

スポンサー候補から提示された条件に基づき、再生計画を作成して金融機関の同意を得ることができれば、基本的に私的整理は成立となります。

 

3. 経営者の連帯保証の問題

事業再生・私的整理の中で常に問題となるのが、経営者による連帯保証の問題です。

日本では会社が金融機関から借入れを行う際には経営者が連帯保証を行うことが慣例となっておりますので、会社が私的整理を行う際には、経営者の連帯保証も併せて処理する必要があります。

この点については、「経営者保証に関するガイドライン」、または裁判所における特定調停手続を利用し、経営者の財産のうち自宅(華美でないもの)や最低限の現預金などを残して、資産を換価し、弁済することになります。

したがって通常は経営者の方も一定額の資産を失うことになりますが、破産の場合と比較すれば手元に残る資産の額は多く、また破産することによる信用情報機関への登録などの不利益を回避することもできますので、破産よりは有利と考えられます。

 

4. まとめ

本コラムでは、事業再生・私的整理の文脈におけるM&Aについて、経営者の私的整理の問題と併せてポイントを解説させていただきました。

事業再生・私的整理の局面では、通常のM&Aでは想定されない問題も多数あり、難易度は非常に高くなっております。そのためM&Aのみでなく、事業再生・私的整理についての知見がある弁護士・公認会計士などの専門家に依頼することが重要となります。

当事務所ではM&Aのみでなく、多くの事業再生・私的整理をサポートしており、また事業再生・私的整理の知見がある公認会計士・税理士とも連携したサポートを提供しておりますので、事業再生・私的整理を検討中の方は、一度当事務所までご相談ください。

 

※本コラムの内容は、一般的な情報提供であり、具体的なアドバイスではありません。お問い合わせ等ございましたら、当事務所までご遠慮なくご連絡下さいますよう、お願いいたします。

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