弁護士コラム

弁護士コラム「事業承継と経営者の連帯保証①」が掲載されました。

2021.06.22

日本の中小企業においては、金融機関からの借入れ・取引先に対する債務について、経営者個人が連帯保証を行うという慣行が今もなお残っています。

かかる経営者保証については、新しいビジネスへの取組みを阻害し、経営難に陥った際に事業再生を行う決断を遅らせる要因となることが以前より指摘されており、その結果、2016年より金融機関からの借入れについて、経営者保証に関するガイドライン(経営者保証ガイドライン)の適用が開始されるに至りました。

経営者保証ガイドラインは、主に中小企業の事業再生・清算において活用されていますが、経営者保証は事業再生・清算に限らず、事業承継の局面でも大きな問題となっています。

すなわち、現経営者による個人の連帯保証を後継者が引き継ぐことが、事実上の事業承継の条件となってしまうことにより、後継者が見つからず、休業・廃業に追い込まれる中小企業が多数存在する事態となっているのです。

ある会社が事業承継について考えるとき、経営者保証の問題がある場合には事前に解決策を講じておく必要があります。

そこで本コラム及び次回のコラムにおいて、事業承継と経営者保証の問題のポイントを解説させていただきます。

 

1. 金融機関からの借入れと経営者保証

2019年に公表された経営者保証ガイドラインの特則では、事業承継の場面において、金融機関からの借入れにつき後継者が連帯保証を行うことについて、以下の規律が設けられています。

 

・ 後継者に対し経営者保証を求めることは事業承継の阻害要因になり得ることから、後継者に当然に保証を引き継がせるのではなく、必要な情報開示を得た上で、ガイドライン第4項(2)に即して、保証契約の必要性を改めて検討するとともに、事業承継に与える影響も十分考慮し、慎重に判断することが求められる。

・ 具体的には、経営者保証を求めることにより事業承継が頓挫する可能性や、これによる地域経済の持続的な発展、金融機関自身の経営基盤への影響などを考慮し、ガイドライン第4項(2)の要件の多くを満たしていない場合でも、総合的な判断として経営者保証を求めない対応ができないか真摯かつ柔軟に検討することが求められる。

・ また、こうした判断を行う際には、以下の点も踏まえて検討を行うことが求められる。

① 主たる債務者との継続的なリレーションとそれに基づく事業性評価や、事業承継に向けて主たる債務者が作成する事業承継計画や事業計画の内容、成長可能性を考慮すること

② 規律付けの観点から対象債権者に対する報告義務等を条件とする停止条件付保証契約等の代替的な融資手法を活用すること

③ 外部専門家や公的支援機関による検証や支援を受け、ガイドライン第4項(2)の要件充足に向けて改善に取り組んでいる主たる債務者については、検証結果や改善計画の内容と実現見通しを考慮すること

④ 「経営者保証コーディネーター」によるガイドライン第4項(2)を踏まえた確認を受けた中小企業については、その確認結果を十分に踏まえること

 

・ こうした検討を行った結果、後継者に経営者保証を求めることが止むを得ないと判断された場合、以下の対応について検討を行うことが求められる。

⑤ 資金使途に応じて保証の必要性や適切な保証金額の設定を検討すること(例えば、正常運転資金や保全が効いた設備投資資金を除いた資金に限定した保証金額の設定等)

⑥ 規律付けの観点や財務状況が改善した場合に保証債務の効力を失うこと等を条件とする解除条件付保証契約等の代替的な融資手法を活用すること

⑦ 主たる債務者の意向を踏まえ、事業承継の段階において、一定の要件を満たす中小企業については、その経営者を含めて保証人を徴求しない信用保証制度を活用すること

⑧ 主たる債務者が事業承継時に経営者保証を不要とする政府系金融機関の融資制度の利用を要望する場合には、その意向を尊重して、真摯に対応すること

 

すなわち、金融機関が後継者に連帯保証を求める上では、まず上記①~④の点を考慮し、経営者保証の要否を慎重に検討することが求められます。

また、金融機関による検討の結果、後継者による経営者保証がやむを得ないと判断された場合でも、漫然と経営者保証を求めるのではなく、上記⑤~⑧のような柔軟な対応の可否を検討することになります。

 かかる経営者保証ガイドラインの特則は、公表されてからそれほど時間が経っていないため活用例は少ないと思われますが、後継者による無限定な連帯保証を回避するための有効な手段となり得るものです。

 

2. まとめ

本コラムでは事業承継と経営者保証の問題のうち、後継者が金融機関からの借入れについて連帯保証を求められた場合の対応策について、大きなポイントを紹介させていただきました。次回のコラムでは、取引先に対する債務と経営者保証の問題について紹介させていただく予定です。

当事務所では、経営者保証の問題を含め、事業承継に伴う様々な法的問題を解決するためのアドバイスを行い、円滑な事業承継の実行をサポートしております。

事業承継に関してお悩みの方は、当事務所までご相談ください。初回相談は無料で承っておりますので、お気軽にお電話又はお問い合わせフォームからご連絡ください。

 

※本コラムの内容は、一般的な情報提供であり、具体的なアドバイスではありません。お問い合わせ等ございましたら、当事務所までご遠慮なくご連絡下さいますよう、お願いいたします。

03-3525-8940

お問い
合わせ