弁護士コラム

弁護士コラム「中小企業のM&Aによる事業承継」が掲載されました。

2021.07.06

日本の会社の99%以上を占める中小企業の多くが、現在、事業承継の問題に直面しています。従業員の高齢化、労働関連法令をはじめとする規制の厳格化、新型コロナウイルス感染症による事業環境の変化など、経営者が取り組まなければならない問題は日々増えており、その中で事業承継について腰を据えて検討することは簡単ではありません。

そもそも事業承継は人生で一度あるかどうかのイベントですので、「事業承継の準備」と言われても何から手を付けてよいのか分からないという方が多いと思われます。

事業承継は、後継者の性質に応じて以下の3つに分類されることが一般的です。

① ご親族への承継

② 従業員への承継

③ 社外の第三者への承継

 

かつては事業承継といえば①のご親族への承継が最も多く、ご息女・ご子息がご不在の場合には番頭などの③従業員への承継を検討する、という流れが通常でした。

しかし近年では、③社外の第三者への承継、すなわちM&Aを利用した事業承継の件数が増えております。

当事務所においても、株式譲渡・事業譲渡などの手法を活用した、M&Aによる事業承継についてのご相談を承ることが以前よりも多くなっておりますので、本コラムでは中小企業の経営者の方向けに、M&Aによる事業承継のポイントについて解説させていただきます。

 

1. M&Aによる事業承継とは

そもそもM&Aによる事業承継とは、具体的にどのような意味なのでしょうか。

ご親族への承継のケースで最も多く採用される手法は、経営者が後継者となるご親族に対して、会社の株式を生前贈与することです。

この手法が採用される前提について考えてみると、まず後継者がご親族であり、経営者が後継者に対して事業承継の「対価」を請求することが想定されていないことが挙げられます。

また、後継者は新たな経営者となるため、株式を譲り受けることで会社全体の経営について責任を負うことが前提とされています。

他方で、後継者が社外の第三者となる場合には、上記のいずれの前提も、必ずしも妥当しないものと思われます。

すなわち、経営者としては、長年にわたって築き上げた会社の経営権を後継者に譲り渡すことに対して、相応な「対価」を請求することが通常です。

また後継者も対価を支払う以上は、対価に見合ったリスクの範囲内で事業を譲り受けることが理にかなうため、会社に不採算事業があるようなケースでは、その事業は承継の対象外とするべく、株式譲渡ではなく事業譲渡・会社分割といった形での事業承継を望むこともあり得ます。

以上の点からしますと、社外の第三者への承継とは経営者と後継者の間の取引にほかならず、この取引で用いられる手法が、株式譲渡・事業譲渡といったM&Aで利用されるスキームであることから、「M&Aによる事業承継」、「M&A型事業承継」と呼称されるものと理解できます。

 

2. M&Aによる事業承継の準備

それでは、中小企業の経営者がM&Aによる事業承継を選択した場合、どのように準備を始めればよいのでしょうか。

対内的な準備として取り組みやすいのは、「どのような条件であれば譲渡できるか」という、事業承継の条件面の検討です。

事業承継の対価、後継者の属性、事業承継実行後の自らのポジション、従業員の雇用維持など、事業承継の実行にあたっては様々な条件を検討しなければなりません。

最終的にはこれらの条件を契約書に落とし込むことになりますが、初期的にどのような条件を希望するのかを明確にすることで、次のステップに進みやすくなります。

また、対外的な準備としては、顧問弁護士や顧問税理士などの専門家への相談があります。

現時点の会社の業績、今後の成長の可能性、会社内部の問題の有無など、事業承継の実行の障害となり得る事象の有無を事前に検討し、もし問題があれば解決することで、後継者の探索が容易となります。

M&Aによる事業承継においては、後継者となる買主の存在が大前提となります。買主候補の数が多ければ多いほど、経営者が希望する条件での事業承継の可能性が高まりますので、専門家への相談は早ければ早いほど良いと言えます。

もし身近に事業承継の専門家がおられない場合には、各都道府県に設置されている、国が運営する「事業承継・引継ぎ支援センター」へのご相談をお勧めします。

事業承継・引継ぎ支援センターでは、事業承継に関する相談を受け付けており、必要に応じて専門家の紹介も行っておりますので、相談できる専門家がおらずお困りの場合にはぜひご活用ください。

 

3. まとめ

本コラムでは、M&Aによる事業承継とは何か、M&Aによる事業承継の準備はどのように行えばよいのかについて、重要なポイントを解説させていただきました。

M&A」というと、ご自身には縁のないものだと考えられ、事業承継の選択肢から外してしまう方もおられますが、現在では事業承継の有力な選択肢の1つになっております。

当事務所では、事業承継・M&Aを多数手がける弁護士が、必要に応じて税理士・会計士とも連携して中小企業の経営者の皆様をサポートしております。

事業承継・M&Aに関する初回の相談は無料で承っておりますので、お気軽にお電話又はお問い合わせフォームからご連絡ください。

 

※本コラムの内容は、一般的な情報提供であり、具体的なアドバイスではありません。お問い合わせ等ございましたら、当事務所までご遠慮なくご連絡下さいますよう、お願いいたします。

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