弁護士コラム

弁護士コラム「事業承継にかかるコストは?②」が掲載されました。

2021.07.12

事業承継を検討されている経営者の方の多くは、事業承継をどうしたら成功させることができるのか考えるのと同時に、事業承継を実行する上で必要となるコストについてもお悩みかと思います。

そこで前回のコラムでは、親族内承継による事業承継の場合に一般的に必要となる、税金や専門家費用といったコストについて解説させていただきました。

本コラムでは、従業員承継・社外の第三者への承継(M&A)による事業承継の場合のコストについて、ポイントを紹介させていただきます。

 

 

1. 従業員承継にかかるコスト

まず従業員承継の場合のスキームですが、従業員承継では贈与よりも株式譲渡の手法が用いられることが一般的です。現経営者と、後継者となる従業員の方との関係性によっては(生前)贈与による場合もありますが、無償で株式を譲り受けられるケースは少数かと思われます。

株式譲渡の場合、現経営者と後継者の双方が合意した価格で、現経営者が会社の株式を後継者に譲渡することになるのが通常です。

この場合、①現経営者が株式を取得した際の価格と、②後継者に譲渡した際の価格の差額につき、現経営者に税負担が生じます。そのため、現経営者が何十年にもわたって会社を経営されており、その間に会社の価値が大幅に高くなっているケースでは、現経営者の税負担はかなりの額となりますので、ご留意ください。

税負担のシミュレーションについては税理士に、株式譲渡に必要な株式譲渡契約書などの書類の作成業務については弁護士に依頼することが通常です。

従業員承継の場合には、後継者である従業員との間に信頼関係があり、契約書の内容が第三者への承継(M&A)の場合ほど厳格なものとなりません。そのため単純な株式譲渡であれば、いずれも100万円程度のコストで対応可能と思われます。

これらのコストに加え、事業承継の成功率を高めるための事前の準備や、事業承継実行に後継者が会社を成長させるための戦略策定などについても専門家のサポートを得ることが可能であることは親族内承継の場合と同様です。

 

2. 第三者への承継(M&A)の場合

これまで述べてきた親族内承継・従業員承継の場合と異なり、第三者への承継(M&A)に必要となるコストは、予測することが非常に難しいです。

というのも、第三者への承継の場合には、株式譲渡以外にも、事業譲渡、会社分割、あるいはこれらの組み合わせなど、その手法が多岐にわたるためです。

第三者への承継の場合にいかなる手法を選択するかは、税負担の重さ・手続の煩雑さによって変わってきますが、これについては後継者である買主の方で検討し、現経営者に提案することが一般的です。後継者にとって税務上有利な手法がある場合には、税務上のメリットを見込んで現経営者に支払う対価を引き上げることも可能になりますので、このような進め方は双方にとってメリットがあると言えます。

他方で、税務上のメリットを得るための検討に必要となる税理士・公認会計士のコストや、複雑な契約書を作成するための弁護士のコストについては、親族内承継・従業員承継の場合よりも増大することが通常です。

見込まれる業務量・業務の難易度に応じて専門家費用は変わってきますが、親族内承継・従業員承継と比較すれば高額なものとなります。

それでもなお第三者への承継が増えているのは、現経営者が得る対価が、親族内承継・従業員承継とは比較できない金額となるからではないでしょうか。

 

3. まとめ

本コラムでは、従業員承継・第三者への承継の場合に必要となるコストについて、ポイントを紹介させていただきました。

近年では、専門家に依頼することなく事業承継を進められる方も増えておりますが、ご自身で進められた場合のリスクと、専門家に依頼した場合に得られる安心感を比較衡量すると、最終的には専門家に依頼される経営者の方が多数派だと思われます。

当事務所では、事業承継を専門とする弁護士が、同じく事業承継を専門とする税理士・公認会計士と連携して、中小企業の経営者の皆様をサポートしております。

事業承継に関する初回の相談は無料で承っておりますので、お気軽にお電話又はお問い合わせフォームからご連絡ください。

 

※本コラムの内容は、一般的な情報提供であり、具体的なアドバイスではありません。お問い合わせ等ございましたら、当事務所までご遠慮なくご連絡下さいますよう、お願いいたします。

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