弁護士コラム

弁護士コラム「廃業・事業承継の選択」が掲載されました。

2020.07.10

ご自身の年齢や経営上の問題などの理由で会社経営からの引退を考えている経営者の皆様の中には、廃業して会社を清算するか、事業を残すために何らかの形で事業承継を行うかのいずれかで悩まれている方も多いのではないでしょうか。

廃業と事業承継の選択において、絶対的に正しいと言える考え方は無いように思われますが、一定の指針となり得る判断プロセスを今回は紹介させていただきます。

 

 

1. 「会社」と「事業」の違い

廃業か、事業承継かの選択の前提として、「会社」と「事業」という用語の違いをイメージしていただきたいと思います。

イメージとしては、「会社」は資産・負債、従業員、契約関係などの全てを包括する抽象的な概念で、一方で「事業」は、例えば会社が製造事業と飲食事業を営んでいる場合の、製造事業のみ、あるいは両方の事業を指す言葉として使われることが多いと思われます。「事業」とは、会社が営んでいるビジネスそのものを指すと言い換えても良いかもしれません。

「会社承継」や「企業承継」ではなく「事業承継」という用語が使われるのは、事業を残すことができれば、従業員の雇用や、事業が生み出す製品やサービスも守られますので、会社ではなく事業を継続させることが重要という考え方に基づくものと考えられます。

 

2. 事業の健全性

それでは、廃業・事業承継の判断はどのように行うべきなのでしょうか。
1つの考え方として、事業が健全か否かを見極め、健全と言える場合には事業承継を選択するというものがあります。多額の借入金があり、債務超過に陥っている会社でも、事業が健全ということは珍しくありません。そのような会社は単体では事業を継続させることが難しかったとしても、第三者への事業譲渡などの方法で、事業を継続させることが可能です。

そうすると問題は事業が健全か否かの判断ですが、代表的な考え方として、営業利益を判断指標とするものがあります。利息などの支払いを加味した経常利益が赤字の会社でも、営業利益が黒字であれば、事業そのものはキャッシュを生み出していますので、このような考え方にも一定の合理性があると言えます。

この他にも事業の健全性を判断する方法はありますが、どのような方法を採用であれ、事業が健全である場合には事業承継が有力な選択肢となります。

 

3. 廃業の選択

事業の健全性が否定された場合、あるいは事業承継の可能性を探ってみたものの後継者や買主が見つからなかった場合には、廃業という選択を視野に入れる必要があります。
従業員の解雇や店舗の明け渡しなど、廃業には一定の費用が必要となりますので、可能であれば、資金に余裕がある状況で廃業の決定をする方が望ましいでしょう。

また、金融機関からの借入金があり、会社が借入金の全額を返済できない場合には、経営者の連帯保証をどのように処理するべきかという問題もあります。

いわゆる「経営者保証ガイドライン」に沿った処理を行うことが考えられますが、早期に法律事務所にご相談されることをお勧めします。

 

4. まとめ

今回のコラムでは、廃業と事業承継の選択に悩まれた際に、参考となる考え方やポイントを解説させていただきました。

今回ご紹介したのはあくまで一般的な考え方であり、当事務所では経営者の皆様のご意向を最大限尊重し、可能な限りご意向に沿った方針でサポートを行っております。

例え事業の健全性に疑義があるような場合でも、廃業しか選択肢がなく、事業承継の可能性がゼロというわけではありませんので、廃業・事業承継の選択でお悩みの方は、一度当事務所までご相談ください。

 

※本コラムの内容は、一般的な情報提供であり、具体的なアドバイスではありません。

お問い合わせ等ございましたら、当事務所までご遠慮なくご連絡下さいますよう、お願いいたします。

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